新しい版画のかたち
版画が気になっています。
というより、昔から好きでした。
私自身もすこし木版画をやってます。

木を彫り、版を刷り、また彫る。
思った通りにならないことのほうが多いです。
版画というと、浮世絵や新版画、創作版画、民藝運動に連なる木版画を思い浮かべる人も多いかもしれません。
もちろんそうした流れも好きです。
でも最近気になっているのは、もう少し自由な版画。
風間サチコ、若木くるみ、原葉太。
それぞれ表現方法も作品規模もまったく違いますが、「版」という仕組みを自分の表現に引き寄せているところに惹かれます。
風間サチコ

風間サチコさんの作品を初めて見た時、木版画でこんなことができるのかと思いました。
新幹線、オリンピック、戦争、監視社会。
近代以降の出来事を扱いながら、単なる批評や告発では終わらない。
どこかユーモアがあり、不気味で、そして力強い。
木版画という古い技法を使いながら、表現はとても現代美術的です。
近代という巨大な仕組みそのものを版画で切り刻んでいるようにも見えます。
ちょうどいま、弘前で大規模な展覧会も始まりました。
私もぜひ見に行きたいなと思っています。近くの方は足を運んでみてください。
若木くるみ

若木くるみさんを知ったのは、東京都立美術館で開催されていた企画展「つくるよろこび 生きるためのDIY」(2025) でした。
身の回りのもの、自分の身体、日用品。
なんでも版にしてしまうところが面白い。
版画というと、どこか特別な技術のように見えることがあります。
でも若木さんの作品を見ていると、「これなら自分もやってみたい」と思わせてくれる気持ちよさがあります。
潔さというか、軽やかさというか。
作ることそのものの楽しさが、そのまま作品になっているように感じます。
版画は特別なものではなく、もっと身近な表現なのかもしれないと思わせてくれる作家です。
原葉太

原葉太さんは、この3人の中で一番若く、木版やゴム版を使いながら絵本や本を制作しています。
2026年5月、阿佐ヶ谷で見た展示では、大量のゴム版が会場いっぱいに敷き詰められていました。
その熱量、版を彫り続ける行為そのものが展示になっているような感覚です。
原くんの魅力は、みずみずしさかもしれません。
友人の子どものために絵本を作ってしまったり、自分が吸っているタバコをそっくりそのまま版画作品にしてしまったり。
身の回りにある出来事や興味を、そのまま版へ移していく軽やかさがあります。
まだ粗削りな部分もあると思います。でも、その未完成さがおもしろい。
手製本による絵本や、他の作家とのコラボレーションも魅力。
TOKIO ART BOOK FAIR 2026 へ参加したりと、これからどんな作品を作っていくのか楽しみです。
版画という言葉から想像する世界は、以前よりずっと広がっている気がします。
言ってしまえば写真も版画みたいなものです。
風間サチコさんのように社会を見つめる版画もあれば、若木くるみさんのように日常を版にする版画もある。原葉太さんのように、すべてを自分で作ってしまう版画もある。
木版、ゴム版、シルクスクリーン。
技法は昔からあるものですが、表現は今も更新され続けています。
今後もどんな作品をつくっていくのか気になってしまいます。