北井一夫 フナバシストーリー
北井一夫 フナバシストーリー
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1960年代、横須賀の原子力潜水艦寄港反対闘争を撮影した『抵抗』や、大学民主化を求める学生運動を記録した「過激派・バリケード」など、時代の最前線と向き合う刺激的な作品を発表してきた写真家・北井一夫。その後も『村へ』『いつか見た風景』といった代表作を通して、社会の変化と人々の生活に寄り添う視線を一貫して貫いてきた。
写真集『フナバシストーリー』は、1980年代を中心とした千葉県船橋の風景を写し取った作品である。人口が急増していた当時の船橋市の行政から、「生活する人たちと町の写真を撮ってほしい」という依頼を受けて制作が始まったが、本書に収められた写真は、北井自身がその地で暮らしていた日常の延長線上にある。個人的な生活の記録であると同時に、結果として一つの時代を刻むドキュメントとなっている点に、本作の大きな特徴がある。
北井は都市近郊の日常へと眼差しを向け、市内を歩きながら、そこに生きる人々の生活の気配を丹念に取材・撮影していった。かつて農村を撮った〈村へ〉とは対照的に、団地や新興住宅地には大きな窓から光が差し込み、物や人の存在も軽やかに、宙に浮くように感じられる——北井自身が語るその感覚の通り、本作には「明るさ」と「軽さ」をまとった都市生活の風景が写し出されている。
劇的な出来事はない。だが、変化の只中にあった1980年代の都市近郊で、人々が暮らし、集い、時間を重ねていく姿が、静かな確かさをもって記録されている。時代の移ろいを敏感に感じ取り、誠実にシャッターを切る北井一夫の姿勢が、日常の光景のなかにくっきりと立ち上がる一冊。
[タイトル] フナバシストーリー
[出版元] 六興出版
[出版年月日] 1989年2月28日(初版)
[ページ数] 頁付きなし
[大きさ] 約21.8 ×16.0cm
[フォーマット] ハードカバー
[タイトルよみ] フナバシストーリー
[著者・編者等] 北井一夫/著
[印刷] 形成社印刷/印刷、大日本製本/製本
[ISBN] 4-8453-6040-3 C0072
[状態] 中古 【4】並下(カバー小スレ、三方少シミ、薄ヤケ)
[付属品] なし(帯欠)
[掲載本]
[関連展覧会]
北井一夫(きたい・かずお)1944-
1944年、中国・鞍山に生まれる。
1965年、日本大学芸術学部写真学科を中退し、同年に初期代表作『抵抗』(未來社)を自費出版。
1969年には成田空港建設に反対する三里塚の農民を取材し、その成果をまとめた写真集『三里塚』(のら社、1972年)で日本写真協会新人賞を受賞する。
1974〜75年に『アサヒカメラ』で連載したシリーズ〈村へ〉によって、1976年に第1回木村伊兵衛写真賞を受賞。以降、国内外で高く評価され、戦後日本を代表する写真家として大きな存在感を持ち続けている。
主な展覧会に「タイムトンネルシリーズ Vol.20 北井一夫〈時代と写真のカタチ〉」(ガーディアン・ガーデン、2004年)、「いつか見た風景」(東京都写真美術館、2012年)など。
主な写真集に『村へ』(淡交社、1980年)、『新世界物語』(長征社、1981年)、『フナバシストーリー』(六興出版、1989年)、『いつか見た風景』(蒼穹舎、1990年)、『1970年代NIPPON』(冬青社、2001年)、『流れ雲旅』(ワイズ出版、2016年)、『過激派の時代』(平凡社、2020年)などがある。
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